AIIT(産業技術大学院大学)の体験をもとにPBL活動の1年間を紹介します。
AIITでは大学院修士を取得するため、1年次は各種講義を受講、2年次は研究室に配属となり研究室メンバーでプロジェクトを行います。
研究室で行うプロジェクトをPBLと呼びます。
当年4月~翌年2月上旬で活動をおこない、なにがしかの成果物を作成し2月10日前後の最終成果発表会で報告します。
今回は私の2019年度の体験をもとに、1年間をまとめました。
所属PBL
私が参加したPBL(研究室)は以下です。
- 年度:2019年度
- 専攻:情報アーキテクチャ
- 科目:情報セキュリティ
- 人数:6名
- 成果物:学会発表(論文/スライド)、調査報告書、学習資料、プログラムなど多数
PBL活動の概略
年間スケジュール
PBL活動は4月~翌年2月の10ヶ月程度で行います。加えて夏休みが2ヶ月あるため公式の活動期間は8ヶ月間です。 年間スケジュールはおよそ以下の通りです。
- 1Q
- 4月~:プロジェクト開始/プロジェクト計画書作成
- 5月~:プロジェクト始動
- 6月~:このあたりでようやく作業に慣れてくる
- 2Q
- 6月中旬~:学習/開発など
- 7月~:学習/開発など
- 8月~:学習/開発など、前期成果報告会
- 夏休み
- 8月~10月:各自で作業
- 3Q
- 10月~:開発
- 11月~:開発
- 12月~:開発
- 4Q
- 12月中旬~:成果物とりまとめ
- 1月~:最終成果発表会準備
- 2月上旬:最終成果報告会/プロジェクト修了
- 春休み
- 最後に学会に出たり懇親会をしたり
主な成果物
各クオーターごとに提出する主な成果物は下記です。数が多いです、全部広げるとかなりの量になります。
- 1Q
- プロジェクト計画書 (右も左もわからず大苦戦)
- 週報 (毎週提出/Webフォームに入力)
- マンスリーレビュー資料 (説明スライド)
- 成果物リスト (副担任から要求される)
- セルフアセスメント (クオーターごとに提出/Webフォームに入力)
- PBL活動の成果物 (プログラム/ドキュメント/学会発表資料/論文その他コンテンツ)
- 2Q
- 週報 (毎週提出/Webフォームに入力)
- マンスリーレビュー資料
- 成果物リスト (副担任から要求される)
- セルフアセスメント (クオーターごとに提出/Webフォームに入力)
- 前期成果報告書 (A4で7Pくらい書いた)
- PBL活動の成果物 (プログラム/ドキュメント/学会発表資料/論文その他コンテンツ)
- 前期成果報告会資料 (説明スライド)
- 3Q
- 週報 (毎週提出/Webフォームに入力)
- マンスリーレビュー資料
- 成果物リスト (副担任から要求される)
- セルフアセスメント (クオーターごとに提出/Webフォームに入力)
- PBL活動の成果物 (プログラム/ドキュメント/学会発表資料/論文その他コンテンツ)
- 4Q
- 週報 (毎週提出/Webフォームに入力)
- マンスリーレビュー資料
- 成果物リスト (副担任から要求される)
- セルフアセスメント (クオーターごとに提出/Webフォームに入力)
- 年間活動報告書 (A4で2枚、論文形式)
- PBL活動の成果物 (プログラム/ドキュメント/学会発表資料/論文その他コンテンツ)
- 最終成果報告会資料 (説明スライド)
- 最終成果報告会成果パネル (A1で1枚、サイズが大きくて作るの大変だった)
- 最終成果報告会展示パネル (A1で2枚、成果パネルの倍くらい大変だった)
スケジュールの説明とコメントなど
1Q(4月~6月):プロジェクト立ち上げ
2月の配属先PBL(研究室)の発表後、4月より活動を開始します。
チームによっては3月から活動を始めますが、教員の指導は4月からです。4月になるまでは顔合わせと懇親会くらいしかできません。
最初の関門は「プロジェクト計画書」です。プロジェクト開始後すぐに提出が必要であるにもかかわらず「書式自由」というフリーダムな仕様です。まず間違いなく迷走します。
4月末にはプロジェクトの方向性を決めましょう。5月になってプロジェクトの方向性が決まっていないとかなりまずいです。
その後、マンスリーレビュー(実は毎月やらなくてもいい)、各種開発などプロジェクトの主目的である作業と進みます。
この時期はチームビルディングです。PMは本当に大変です(体験談)。
※ゴールデンウィークに作業をしすぎてメンバーがグロッキーになります
2Q(6月~8月):学習と試運転
6月中旬以降は、学習をメインに活動します(チームによりかなり異なる)。
メンバー間の理解も進み、活動にも慣れてきます。作業の効率が上がりプロジェクトを安定して進行できるようになります。
チームによってはこの段階で学会発表を行うこともあります。
クオーター最後にある前期成果報告会で、前半学期(1Q/2Q)の成果を発表しますが、この時点で目に見える成果があることは少ないです。
大抵は「これからこの方針でがんばります」のような発表になります。
つまり、夏休み以降にプロジェクト計画書の改訂と方針の変更がありえます(まず間違いなくやります)。
※前期成果発表会後はどのチームも打ち上げをします。2019年度は複数チームまとめて懇親会をしました。
夏休み(8月~10月):休みなんてない
夏休み中もフルで活動します。
前半学期で積み残した作業と、後半学期の準備を進めます。ここでどの程度作業をするかで10月以降の成果が大きく変わります。
これ以降は作業時間の残り時間が少なくなるため、夏休み中にまとまった時間を確保する必要があります(かなり切実な体験談)。
3Q(10月~12月):最後の追い込み
まともに作業ができるのは実質的に夏休み~3Qです。
3Qはプロジェクトの目的となる成果物をチームでなんとか仕上げます。
1Q~2Qで学んだ内容をもとに開発やコンテンツの作成を進めますが、期間4ヶ月間で初見の作業を行うのはきついものがあります。
特に、全員が開発未経験のメンバーでプログラム作成やシステム開発をすると非常に苦労します(体験談)。
3Q後半になると、PBLの成果物もまとまってきます。多くのチームではこの時点で年明けの学会発表を準備していました。
4Q(12月~2月):成果のまとめ
1Q~3Qのプロジェクト成果物をまとめ、最終成果報告会の準備をします。
このクオーターに入った時点で開発やコンテンツ作成を行う時間はありません。ほぼすべてが報告会の準備です。
年末休み(12月末~1月3日前後)に最終成果報告会で使うパネルやスライドを7割方終わらせ、PBLの活動報告書などドキュメント作成を行います。
この時点でPBL活動の成果物が相当数たまっており、それを取りまとめるのは並大抵ではありません。
(大晦日に紅白歌合戦を見ながらパネルのデータを作ったり、発表会直前までデモ動画を編集するなどします。)
学会がこの時期に開かれる、メンバーが風邪でダウンする、などで活動できるメンバーが減ることもあります。
1Qと同じくらいきついです。
最終成果発表会をもってプロジェクトは終了です。
冬休み(2月~3月末):学会など
人によっては最終成果発表会後に学会に出る、やむおえず残った作業を行うなどします。
それ以外には、ロッカーの片付け、教育訓練給付金の申請、進路届の提出、打ち上げ、博士課程進学について情報交換を行うなど各員のライフスタイルにあわせて過ごします。
私は転職活動をしていました。
卒業式に出席し、学位記の受け取りをもって卒業となります。
※卒業式の後に学生主催の懇親会が予定されてました。これはコロナウィルスの流行で5月以降に延期になりました。
補足
ゴールデンウィーク/夏休みについて
ゴールデンウィーク・夏休みを休みにするか、PBL活動にするか意見が割れます。
ご安心ください。実際にはゴールデンウィークも夏休みも休めません。
どこのチームも週1回学校で集まる、オンラインで打ち合わせするなどして活発に活動します。
作業の期間と時間が足りなくなるため休みを取る余裕がないです。
成果物リストについて
副担任はマンスリーレビューに成果物リストを添付するよう要求します。
PBLメンバーの成績を検討するにあたり、だれが何をどの程度作業したのかを知るためと思われます。
私達のチームではEXCELで作成したリストをメールで提出していました。
成果物リストについて詳しくは、別の記事で解説します。
マンスリーレビューについて
副担任と外部評価者にプロジェクトの進捗を報告する会合です。
チームによって呼び方が異なり「月例報告」「パブリックレビュー」という場合もありました。
他にPBLの先輩方が出席し、コメントをくださる場合もあります(かなり助かります)。
感想
忙しくて死にます(死にました)。
平日8時間の勤務 + 平日夜のPBL作業 + 土日のPBL作業 でヘロヘロになります。
活動中は何度も「いっそ会社やめてしまえば・・・」と思いました。シンプルに作業時間が足りません。
ですが、まあ何とか1年間もちました。作業の範囲を広げすぎなければ何とかなると思います。